一生懸命考えて作ったのに、誰も使ってくれない。
kintoneでアプリを作ったことのある方なら、きっと一度はこの感覚を味わったことがあるのではないでしょうか。業務の流れをしっかり頭に入れて、入力項目もこだわって、「これは絶対便利だ!」と自信を持ってリリースした。なのに気づいたら、みんなこれまで通りのやり方を続けている。Excelはそのまま使われ続け、メモは手書きのまま。あれ?私が作ったアプリはどこへ……。
これ、笑えない「あるある」なんです。実はこの「アプリ使われない問題」は、kintoneを活用しているほぼすべてのチームに起こりうる話です。今日はその理由と、ちょっとした解決のヒントをお伝えしたいと思います。
使う側の気持ちを、少し想像してみる
まずちょっと立場を変えて考えてみましょう。
突然こんなことを言われたとします。「来週から、この業務はこの新しいアプリでやってください」。
どうでしょう。正直なところ、すんなり「はーい!」とはなりにくくないですか?
仕事のやり方が変わることは、頭では「改善のためだ」とわかっています。でも気持ちの面では、どうしても「またやり方変えるの?」という抵抗感が出てきます。これ、別に怠け者だとか保守的だとかいう話ではなくて、人間として自然な反応なんですよね。
特に今まで同じやり方でちゃんと仕事をこなしてきた人にとっては、「今のやり方の何がダメなの?」という気持ちもあります。その感情に蓋をしたまま「とにかく使って」と押しつけてしまうと、中身を見る前に「拒否反応」が出てしまう。これが、アプリが使われない最初の壁です。
さらにもう一つ。新しいアプリって、たいてい「使い方がわからない」んです。
作った側は業務をよく知っているから直感的に見えても、使う側からすれば「この項目、何を入力するの?」「ここを押したらどうなるの?」と不安だらけ。誰だって、わからないものは使いたくないですよね。
「現状を聞く」ことから始めてみる
では、どうすればいいか。
ここで「すぐにアプリを作り始める」のをちょっと待ってほしいのです。まず最初にやるべきことは、今どうやって仕事しているかを一緒に整理すること。
「え、そんな遠回りなこと?」と思った方、気持ちはすごくわかります。早くアプリを作りたいですよね。でもこの一手間が、後々の「使われない問題」を防ぐ大きな分かれ道になるんです。
具体的には、担当者に今の業務の流れを聞きながら、一緒にマニュアルを書き起こしてみることをおすすめしています。「今、この作業ってどういう手順でやってますか?」「どんな情報を確認しながら進めてますか?」——こういった会話を通じて、現場の実態が見えてきます。
ここで大事なのは、「それじゃダメですね」とダメ出しするのではなく、「なるほど、そういうやり方をしているんですね」とまずしっかり受け止めること。今のやり方が続いてきたということは、それなりに機能してきた証拠でもあります。全部を否定するのではなく、「どこを改善したら、もっとラクになりますか?」という問いかけに変えていく。
この対話の中で、担当者自身が「そういえばここが面倒なんだよね」「この確認作業、毎回時間かかるんです」と課題を話してくれるようになります。そうなったらしめたもの。アプリで解決できる課題が、自然と浮かび上がってくるのです。
マニュアルが先、アプリは後
会話を通じて業務の流れが整理できたら、次はそれをマニュアルとして書き出してみましょう。
「え、マニュアル?面倒じゃない?」と感じる方もいると思います。でも、ここが肝心なんです。
マニュアルを一緒に書く作業は、担当者にとって「自分たちの仕事を見直すきっかけ」になります。「あれ、この手順って実はこっちが先の方が効率よくない?」「この確認ってそもそも必要かな?」——書き出してみることで初めて気づく改善点というのが、案外たくさんあるものです。
そしてここでアプリを作るのではなく、まずこの改善された業務フローをマニュアルとして完成させる。これが大事なステップです。
アプリはその後で十分間に合います。完成したマニュアルを見ながら「この部分をkintoneで自動化できます」「この情報は一覧で見えると便利ですね」と話をすると、担当者も「ああ、そういうことか」とアプリの役割を理解してくれます。なんとなく押しつけられたツールではなく、自分たちの業務を助けてくれるものとして受け取ってもらえるようになる。
しかもこのとき、マニュアルがそのまま「アプリの使い方マニュアル」のベースになります。「このアプリで今まで手書きでやっていたこの作業ができます」という説明がすでに準備されているわけです。
マニュアルが、アプリを生かす
少し大げさかもしれませんが、私はマニュアルを「アプリの命綱」だと思っています。
どれだけ優れたアプリでも、使い方がわからなければ使われません。どれだけ良い改善案でも、現場の人が「自分たちには関係ない」と感じれば広がりません。マニュアルという形で業務を言語化し、担当者と一緒に考える——この工程が、アプリを生きたものにする土台になるんです。
「社内システムの使い方マニュアル」を書くとき、大切なのはとにかく読みやすくすることです。作った側の言葉ではなく、使う人の言葉で書く。「フォームに入力して保存ボタンを押す」ではなく、「お客様の名前と電話番号を入力して、右上の『保存』を押せばOKです」と、具体的にやさしく書く。スクリーンショットを使ったり、よくある間違いをあらかじめ補足しておくのも効果的です。
読んで「なんとなくできそう」と感じてもらえるマニュアルが書けたとき、それがアプリ活用の本当のスタートになります。
遠回りが、実は一番の近道
「アプリ使われない問題」の原因は、アプリが悪いわけでも、スタッフがやる気を持っていないわけでもないことが多いです。ただ、「現状を共有する工程」が抜けていることが多いんですよね。
まず現状の業務を一緒に聞き出して、マニュアルに書き起こす。業務フローを整理しながら課題を一緒に見つけていく。アプリを作るのはその後。この順番を変えるだけで、アプリの使われ方がガラッと変わります。
一見遠回りに見えるこのプロセス、実は一番の近道です。「マニュアルなんて面倒」と思っていた方も、一度だけ試してみてください。業務の見え方が変わって、ちょっとした「あ、なるほど」が生まれるかもしれません。
仕事をもっとスムーズに、もっと愉しくするための一歩は、意外と身近なところにあります。
Gibbons 