── 現場に根づく“基準づくり”が組織を強くする理由
データドリブン、AIドリブン…経営の基点をどこに置くかが企業の未来を左右します。しかし、言葉だけ先行すると「難しそう」と感じてしまうもの。そこで、日々の業務に一番近い“マニュアル”を経営の基準に置く「マニュアルドリブン」の考え方をご紹介します。
マニュアルドリブンは“現場の意思統一ツール”
▼なぜ「基準」がないと改善は進まないのか
多くの企業が抱えている課題はとてもシンプルです。
- 人によってやり方が違う
- 誰の意見が正しいか議論が割れる
- そもそも何を基準に判断すればいいのかわからない
業務改善の話し合いをしても、基準がないと「なんとなくの感覚」で意見が分かれ、結局判断が持ち越される…という経験は多くの現場であります。
そこで必要になるのが“共通の基準”です。
マニュアルは、「作業の手順」ではなく
“組織の判断基準となるドキュメント” として機能させることができます。
この基準があることで、改善の方向性が揃い、議論の軸もぶれません。
マニュアルを“経営の基準”にするとは?
▼データドリブンよりも、もっと身近な言葉
「データドリブン」と聞くと、専門分析や高度なダッシュボードを想像し、少しハードルが高く感じる方もいるかもしれません。
しかし本質はとてもシンプルで、
「判断の根拠をデータに置く」
という意思表示にすぎません。
同様に、マニュアルドリブンとは
「現場で繰り返されている業務の“基準”を可視化し、それに沿って改善していく」
ことを意味します。
つまり、日々の改善で迷ったときに立ち返る“羅針盤”をつくるイメージです。
マニュアルドリブンの時代が来た理由
── 生成AIで“最善の方法”が溢れたから
今、生成AIを使えば「もっと良い方法」がいくつも提案されます。
その結果、こんな現象が起きています。
- Aさん「AIはこの方法が最適と言っていた」
- Bさん「いや、別のAIの回答ではこう書いてあった」
- Cさん「私の経験では違うやり方がいい」
良い方法が複数あるのは決して悪いことではありません。
しかし、意思決定の場では 「どれを基準に採用するのか」 を決めない限り議論は前に進みません。
だからこそ、今の時代にこそ
“マニュアルという共通の土台を整えること”
がより重要になってきています。
現場で始める「マニュアルドリブン」3つの実践方法
① とにかく「今のやり方」を書き出す
最初から完璧なマニュアルにする必要はありません。
- 付箋レベル
- 箇条書き
- スクリーンショット一枚
この程度でも立派な“基準の原型”です。
現場で迷いやすい箇所から書き出すと効果が出やすく、小さな成功体験が積み重なります。
② “判断基準”を言語化する
マニュアルの価値は「正しい手順」よりも
“判断がぶれない仕組み”を作れること にあります。
例えば:
- 「〇〇の場合はAを優先する」
- 「判断に迷ったら、まず□□を確認する」
- 「例外は必ず上長へエスカレーションする」
このようなルールがあるだけで、
新人・ベテラン問わず、同じ基準で行動できます。
③ 書いたら“現場で”試す
マニュアルは書いて終わりではなく、
“現場で実際に回してみる”ことが最大のポイント。
改善サイクルは非常にシンプルです。
- 書く
- 試す
- 直す
- 共有する
この流れが回り始めると、組織に「改善文化」が定着します。
現場の人に「どこがやりにくいですか?」と聞きながら、軽い気持ちで修正を続けていくのがコツです。
マニュアルドリブンは“経営判断”を支える
▼基準が浸透すると、組織は一気に強くなる
基準が明確になると、こんな変化が起きます。
- 新人教育のバラつきがなくなる
- 部署間の判断が揃う
- 改善議論のスタート地点が同じになる
- トラブル時の対応が早くなる
- 「誰に聞けばいい?」が消える
特に中小企業では、判断が属人的になりやすく、退職や異動でノウハウが失われがちです。
しかし、マニュアルドリブンを土台にすると、
“ノウハウが会社に蓄積される” 仕組みができ、
結果的に経営の安定・改善につながっていきます。
マニュアルを「現場の手順書」ではなく「経営の基準」として活用することで、改善の方向性が揃い、組織全体が同じ判断軸を持てるようになります。小さな基準づくりから、ぜひ始めてみてください。
Gibbons 
