「人に頼るな、仕組みを作れ」〜kintoneとmanuletで実現する、属人化からの脱却〜

「また、あの人しか知らない仕事が増えている…」

「新人研修に毎回同じ時間を取られて、本来の業務が進まない」

「ベテラン社員が急に辞めてしまい、業務がストップしてしまったらどうしよう…」

そうした不安を感じている中小企業のリーダー・経営者の方、いらっしゃいませんか?

現代のビジネス環境では、人材の流動性が高まり、人の入れ替わりが当たり前になっています。優秀な人材の確保が難しくなる一方で、せっかく育てた社員が転職してしまうリスクも高まっています。

これまでは「あの人しかできない」という属人化をある程度容認してきたかもしれません。しかし、その属人化が事業継続のリスクに直結する時代になった今、抜本的な対策が必要不可欠です。

そこで今回は、DX推進の専門家である私が、kintoneとマニュアル運用ツールmanulet(マニュレット)を使った「仕組み化」の具体的なステップを解説します。このステップを実践すれば、あなたの会社も「人に頼る文化」から「仕組みで動く文化」へと大きく変わります。

なぜ「仕組み化」が今、必要なのか?

まず、なぜ今、これほどまでに「仕組み化」が重要視されているのか、その背景を改めて整理しておきましょう。

1. 人材流動性の高まり

働き方の多様化やキャリアアップへの意識の高まりから、転職が当たり前になりました。特定の社員に業務が集中していると、その人が辞めた瞬間に会社全体が大きなダメージを受けます。

2. 業務の複雑化

ITツールや専門知識が必要な業務が増え、業務内容が複雑になっています。口頭やOJTだけの教育では、情報の伝え漏れや品質のばらつきが起こりやすくなります。

3. 生産性の低下

新人教育に多大な時間を費やしたり、属人化された業務の問い合わせ対応に追われたりすることで、コア業務に集中できず、会社全体の生産性が低下してしまいます。

こうした課題は、日々の業務に追われる中で見過ごされがちです。しかし、このまま放置すれば、会社の成長を阻害するだけでなく、経営の安定性そのものを揺るがすことになりかねません。

kintoneとmanuletで「仕事の見える化」を実現する

では、どうすれば属人化を解消し、「仕組み」を作ることができるのでしょうか。その答えが、kintone(キントーン)とmanulet(マニュレット)の組み合わせです。

kintoneとは?

kintoneは、プログラミングの知識がなくても、自社の業務に合わせたシステムを簡単に作成できるクラウドサービスです。案件管理、顧客管理、問い合わせ管理など、様々な業務アプリをドラッグ&ドロップで作成できます。これにより、バラバラに管理されていた情報を一元化し、「誰が」「いつ」「何を」しているのかを会社全体で共有できるようになります。

manuletとは?

manuletは、kintone上でマニュアルを作成・運用できるプラグインツールです。業務マニュアルやチェックリストをkintoneアプリと連携させ、誰でも簡単に参照・利用できる仕組みを構築できます。

この2つを組み合わせることで、「仕事の見える化」と「ノウハウの共有」が同時に実現します。kintoneで業務プロセスを可視化し、manuletでその業務をどう進めるべきかのマニュアルを紐づける。これにより、新人でもベテランでも、迷わず正確に業務を遂行できる「仕組み」が完成するのです。

成功へのロードマップ:属人化脱却のための3ステップ

ここからは、実際にどのようにkintoneとmanuletを導入していくか、具体的な3つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状把握と「見える化」

まずは、あなたの会社の業務の中で、特に属人化している部分や、マニュアル化が必要な業務を洗い出しましょう。

  • 誰が何をどうやっているかをリストアップ
    • 特定の担当者しか知らない業務は何か?
    • 新人教育で毎回同じ質問が出る業務は何か?
    • 業務の進め方に個人差がある業務は何か?

これらの情報をkintoneの「タスク管理アプリ」などで共有し、業務全体を「見える化」することから始めます。これにより、課題が明確になり、どこから手をつけるべきかがわかります。

ステップ2:kintoneで業務プロセスを設計し、manuletでマニュアルを作成

次に、ステップ1で洗い出した業務をkintoneアプリに落とし込んでいきます。

  • kintoneで業務アプリを作成
    • 営業プロセスなら「案件管理アプリ」、経理業務なら「経費申請アプリ」など、業務の流れに沿ったアプリを作成します。
  • manuletでマニュアルを作成・紐づけ
    • 作成したkintoneアプリの各プロセスに合わせて、manuletでマニュアルを作成します。
    • 「見積もり作成の方法」「経費精算の手順」など、具体的な手順を画像や動画も活用して分かりやすくまとめます。

この時、いきなり完璧なマニュアルを作ろうとしないことが重要です。まずは「最低限、これだけは押さえてほしい」という内容から作成し、運用しながら改善していくのが成功の秘訣です。

ステップ3:運用と改善

「仕組み」は作って終わりではありません。実際に運用し、現場の声をもとに改善を繰り返すことが不可欠です。

  • 全社員にマニュアルの利用を徹底
    • 新人教育はもちろん、既存社員もマニュアルをベースに業務を進めるルールを設けましょう。
  • フィードバックの収集と改善
    • 「マニュアルがわかりにくい」「この手順が抜けている」といった意見をmanuletのコメント機能などで集め、マニュアルを更新していきます。

このサイクルを回すことで、マニュアルは常に最新の状態に保たれ、会社の「生きた資産」となっていきます。

仕組み化がもたらす3つの効果

kintoneとmanuletによる仕組み化は、単に業務が整理されるだけでなく、会社全体に様々なポジティブな変化をもたらします。

効果1:新人教育コストの劇的な削減

業務マニュアルが整備されているため、新人教育にかかる時間が大幅に短縮されます。OJTの負担が減り、ベテラン社員は本来の業務に集中できます。ある企業では、新人研修にかかる時間が約30%削減できたという事例もあります。

効果2:業務品質の均一化

誰が担当しても同じ手順で業務を進められるため、業務品質が均一化し、ヒューマンエラーを減らすことができます。これは顧客満足度の向上にも直結します。

効果3:事業継続性の向上と心理的な安心感

特定の社員に依存しない業務体制が構築されるため、退職や休職があっても業務が滞ることがなくなります。これは経営者にとってはもちろん、社員にとっても「安心して働ける」という心理的な安心感を生み出します。

よくある障壁と克服法

「うちの会社でも本当にできるだろうか…」

そう不安に思う方もいるかもしれません。仕組み化を進める上で、よくある障壁とその克服法をご紹介します。

障壁1:忙しくてマニュアルを作る時間がない

  • 克服法: いきなり全業務をマニュアル化しようとせず、まずは「最も属人化している業務」や「新人教育で頻繁に質問が出る業務」など、効果が最も大きい部分からスモールスタートしましょう。

障壁2:社員がマニュアルを見てくれない

  • 克服法: マニュアルをただ置くだけでなく、kintoneアプリと連携させて「業務を進めるために必ず見るもの」という位置づけにすることが重要です。manuletであれば、アプリ画面からワンクリックでマニュアルを参照できます。

仕組み化の第一歩を踏み出しましょう

「人に頼るな、仕組みを作れ」という言葉は、時に冷たく聞こえるかもしれません。しかし、これは「社員を信用しない」ということではなく、「社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を作る」ということです。

kintoneとmanuletを組み合わせることで、属人化というリスクを解消し、誰もが迷わず、安心して働ける会社を作ることができます。それは、社員の成長を促し、会社の持続的な発展につながる確実な一歩です。

まずは、あなたの会社で最も属人化している業務を一つ選んでみませんか? そこからkintoneとmanuletを使った「仕組み化」の旅を始めてみましょう。

この一歩が、あなたの会社を未来へと導く大きな力となります。