―マニュアルとkintoneを活用した業務改善のすすめ―
比べられる「人の仕事」、比べにくい「みんなの仕事」
「仕事の品質をもっと高めたい」――これは経営者やリーダーであれば誰しも思うことです。
ところが現場で耳にするのは、
- 「Aさんは速いのに、自分は遅い」
- 「同じ仕事なのに、やり方が人によって違う」
- 「なぜ自分ばかり注意されるのか」
といった“人と比べる”言葉です。人間には競争心があり、誰かと比べてしまうのは自然なことです。しかし、この比べ合いは必ずしも品質向上にはつながりません。
むしろ、摩擦や不満を生み、結果的に組織全体のパフォーマンスを下げてしまうことがあります。
本当に目指すべきは「個人の能力比較」ではなく、「仕事そのものの品質をみんなで高めること」です。
仕事の品質を「見える化」する
人と比べるのではなく、仕事を比べる――そのためには「仕事の見える化」が欠かせません。
たとえば、マニュアルがない状態では、Aさんのやり方とBさんのやり方はそれぞれの頭の中にしか存在せず、比較や改善の土台ができません。
マニュアルを作ることで、初めて共通の基準が生まれます。
- 「このフローのここで時間がかかっている」
- 「このチェック工程は別の部署にも応用できる」
- 「入力の抜け漏れはここで防げる」
こうした気づきは、属人化された状態では決して見えてきません。
「個人の工夫」を「組織の力」に変える
中小企業では、一人の社員が持つ工夫や知恵がその人に依存してしまいがちです。例えば、営業担当のAさんが独自のエクセル表で進捗管理をしていたとします。確かに便利ですが、それをAさんしか使えない状態では、組織としての力にはなりません。
ここで役立つのが kintone です。
kintoneを使えば、個人が持っていた工夫を「チーム全体で使える仕組み」に変えられます。さらに、マニュアルをkintone上で運用することで、
- 誰でも最新の手順を確認できる
- 改善点をその場で共有・更新できる
- AIやプラグイン(例:manulet)を組み合わせて効率的に作成・検索できる
といった環境をつくることができます。これにより、個人の工夫が「組織の資産」として積み上がっていきます。
品質を高めるための3つの視点
- 共通化
マニュアルで作業の基準を統一し、「誰がやっても同じ結果が出せる」状態にする。 - 改善サイクル
日々の業務から出てきた気づきをkintone上に記録し、マニュアルやフローをアップデートしていく。 - 協働
「人と比べる」代わりに「仕事を比べる」文化を育て、社員同士で品質を高め合う。
これらを回していくことで、仕事の品質は自然と底上げされていきます。
中小企業だからこそ「仕事の品質」が武器になる
大企業のように潤沢な人材や資金を持たない中小企業こそ、仕事の品質が大きな差別化ポイントになります。
「社員一人ひとりが同じ水準で仕事ができる」ことは、顧客からの信頼や再発注につながり、ひいては組織の安定成長につながります。
品質は一部の優秀な社員に依存するものではなく、組織全体でつくりあげていくものです。
今日からできる具体的アクション
- まずは、日常の業務を1つ選び、手順をマニュアルにしてみる
- そのマニュアルをチーム全員で確認し、改善点を話し合う
- kintoneなどのツールを使って共有し、常に最新版が見える状態をつくる
この小さな一歩が、やがて大きな品質改善の流れを生みます。
人と人を比べるのではなく、仕事を比べる。
マニュアルとkintoneを使い、個人の知恵を組織の力に変える。
その積み重ねが、中小企業にとっての最大の武器となる「仕事の品質」を高める道です。